「密葬に参列する時って、香典は必要なの?」
「密葬でも香典返しってするべきなのかな?」
「密葬の香典マナーを知りたい。」
密葬は一般葬に比べて行われることが少なく、マナーやしきたりも十分に理解できていないケースもあります。
お金に関わるお香典でもマナーを守れなければ、迷惑をかけたり恥をかいたりするかもしれません。
そこで今回は、密葬におけるお香典のマナーを分かりやすく解説していきます。
参列する場合・しない場合、遺族側の場合、全てにおけるマナーや注意点をお伝えするので、ぜひ該当する箇所をご覧ください。
密葬とはどんな葬儀?
密葬とは、後日の本葬や社葬・お別れの会などの前に、お身内のみでお通夜・告別式・火葬を済ませる葬儀の形態です。
密葬は、大きな会社の社長や著名人が亡くなられた際にとり行われるケースが多く見られます。
そのため密葬後の本葬は、大きな規模の葬儀になる場合が多い点も特徴です。
密葬と家族葬はどちらもごく近しい方々のみでとり行う小さな葬儀であり、混同されがちです。
密葬と家族葬のもっとも大きな違いは、後日本葬や社葬・お別れの会などがとり行われるかどうかという点です。
密葬に参列する場合に香典は必要?
ここでは、密葬に参列する場合にお香典は必要かどうかについて考えていきます。
お香典については、密葬の場合も一般葬と同様とお考えになればよいでしょう。
まずは、お香典を持参して参列することが基本ですね。
香典辞退の連絡がある場合
密葬では、ご遺族の意向でお香典を辞退されるケースも多く見られます。
参列依頼の連絡で喪主やご遺族からお香典を辞退する旨をはっきりと伝えられた場合は、お香典は持参せずに参列します。
「ぜひお香典をお渡ししたい」と思われる方もあるかもしれませんが、無理にお渡ししてはご遺族の負担になりかねません。
ご遺族がお香典を辞退なさる理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 当日の受付で、お香典受け取りの対応ができない
- 後日のお香典返しが負担に感じられる
このようなご遺族のお気もちを尊重することが大切です。
香典辞退の連絡がない場合
お香典辞退の連絡がない場合、もしくはお香典を辞退しているかどうかはっきりと分からない場合は、お香典を持参して参列します。
葬儀会場受付での対応を確認し、受け取っていらっしゃればお渡しします。
辞退されていた場合は、ご遺族の意向に従い、そのまま持ち帰りましょう。
親族や家族の密葬の場合の香典マナー
ご親族やご家族が密葬に参列なさる場合も、お香典は用意しておかれるのが基本です。
とくにお香典についてのご遺族の意向が分からない場合は、必ずお香典を持参し、当日葬儀会場で判断なさることをおすすめします。
密葬にどなたをお呼びするかは、故人の遺志やご遺族の考えで決まります。
参列の依頼があった場合には、できる限り参列しましょう。
参列の依頼がなかった場合は、後日弔問なさるかお悔やみのお手紙をお送りするとよいでしょう。
弔問の際にはお香典を持参し、受け取っていただけるようであればお渡しします。
現金書留でお香典をお送りすることも可能です。
また密葬終了後、時間が経ってから故人が亡くなられたことを知るケースも考えられます。
この場合もまずはご遺族の意向を確かめ、お香典を受け取っていらっしゃるようであれば持参・郵送を検討なさるとよいでしょう。
会社の同僚や友人の密葬の場合の香典マナー
密葬の場合、ご遺族からの依頼がない限り無理に参列することはマナーに反します。
家族葬や密葬では、会社関係の方やご友人など社会的なつながりの方々へは参列をお願いしないケースがほとんどです。
ご遺族からの依頼で参列なさる際には、ご親族やご家族の場合と同様にお考えになるとよいでしょう。
はっきりとお香典辞退の意向が分からない限り、必ずお香典の用意をして参列します。
会場でお香典を受け取っていらっしゃればお渡しし、辞退されていれば無理にお渡しすることは避け、持ち帰りましょう。
会社関係の方やご友人が後日弔問してお香典をお渡しになる場合は、「友人一同」「社員一同」として、まとめてお渡しになることをおすすめします。
一人一人がお香典をお渡した場合、ご遺族はそれぞれにお返しをしなければなりません。
お香典をお渡しになる際は、ご遺族の負担にも気を配りましょう。
密葬と後日の本葬のどちらにも参列する場合
密葬後にとり行われる本葬は、一般的な葬儀と同様にどなたでも参列が可能です。
密葬と本葬どちらにも参列なさる場合、お香典はどちらかに一度持参します。
密葬に参列なさった際にすでにお香典をお渡ししている方は、本葬でお香典をお渡しする必要はありません。
密葬に参列しない場合に香典は必要?
密葬に参列しない場合、お香典は必要ありません。
後日とり行われる本葬に参列する際やお別れの会に出席なさる際にお持ちになるとよいでしょう。
葬儀後にご自宅に弔問なさる方は、その際に持参することもできます。
お悔やみの手紙を添えて郵便書留でお香典を郵送することも可能です。
密葬の香典金額相場
密葬の場合の香典の金額相場は、一般葬の場合と大きな違いはありません。
地域の慣習や宗教などの違いによって多少の金額の前後はありますが、下記の表で故人との関係性別に香典の金額相場をまとめましたので、参考にしてみてください。
故人との関係性 | 香典相場 |
---|---|
両親・義両親 | 30,000円〜100,000円 |
兄弟姉妹・義兄弟姉妹 | 30,000円〜50,000円 |
叔父・叔母・伯父・伯母 | 10,000円前後 |
その他親戚 | 3,000円〜20,000円 |
友人・知人 | 5,000円〜10,000円 |
故人の勤務先の社員(その家族も) | 5,000円〜10,000円 |
(参考:一般社団法人 終活・相談窓口)
また密葬では少人数の葬儀になるため、遺族の費用負担を軽減するために相場よりも多めにお金を包む方もいます。
お香典の金額は、「死」や「苦」を連想させる「4」や「9」がつく金額にならないように注意しましょう。
密葬での香典の渡し方のマナー
次に、密葬におけるお香典の渡し方や服装のマナーについて見ていきましょう。
香典は袱紗に包んで持参する
お香典は、袱紗(ふくさ)に包んでお持ちするのが正式なマナーとされています。
葬儀で使われる袱紗は、紺や青・緑など寒色系のもののみです。
ただし濃い紫色の袱紗は、慶事・弔事の両方に使用が可能です。
一枚お持ちになっておかれるなら、紫色の袱紗がよいでしょう。
葬儀会場に受付がある場合は、受付で香典を渡す
葬儀会場に受付がある場合は、受付で記帳後にお香典をお渡しします。
お香典は、お渡しする相手の前で袱紗から取り出します。
袱紗から取り出した不祝儀袋を相手から表書きが読める方向へ持ち替え、両手でお渡ししましょう。
正式には切手盆や台にのせてお渡ししますが、たたんだ袱紗の上にのせてもかまいません。
「この度はご愁傷さまです」など、短いお悔やみの言葉を添えることも大切です。
葬儀会場に受付がない場合は、遺族に手渡しか御霊前にお供えする
小さな規模のお葬式の場合、受付がないケースも考えられます。
この場合はご遺族に手渡すか、お参りした際に御霊前にお供えしましょう。
御霊前にお供えする際には、表書きはご自分が読める方向でお供えします。
密葬で香典を渡す際の服装マナー
密葬に参列なさる際の服装は、基本的には一般的な葬儀の場合と同じとお考えになるとよいでしょう。
男性はブラックスーツ、女性も同様に黒色のスーツやアンサンブル・ワンピースを着用します。
男性の上着は、ダブルでもシングルでもかまいません。
靴や靴下も黒色のものを選び、ネクタイピンやカフスボタンは使いません。
女性のスカート丈は膝下が望ましく、露出の高いデザインのものは避けましょう。
袖丈も長袖か五分袖までのものを選びます。
黒色の靴・ストッキングを選び、控えめなお化粧と清潔感のある髪型を心がけます。
密葬で香典を入れる不祝儀袋の書き方マナー
不祝儀袋の書き方にもマナーがあります。
たびたび書くという方は少なく、葬儀に参列するたびに迷われることも多いでしょう。
ここでは密葬で香典を入れる不祝儀袋の書き方のマナーについて、くわしく見ていきましょう。
表書き
表書きは、宗教や宗派によって異なります。
仏式の葬儀の場合「御霊前」や「御仏前」が用いられますが、浄土真宗では「御霊前」とは書かず「御仏前」のみが用いられます。
さらに神式の葬儀では「御榊料」や「御玉串料」、キリスト教の葬儀の場合は「御花料」が多く用いられます。
故人の宗派が分からない場合は、「御霊前」とするのがもっとも無難でしょう。
名前
不祝儀袋の水引の下・中央には、お香典を出す人の名前を書きます。
個人で出す場合には中央に、二人以上で出す場合は目上の人の名前を中央にし、順に左へ名前を並べて書きます。
三人までであれば、同様の書き方で表に名前を書いてもかまいません。
いずれもフルネームを書きましょう。
四人以上の場合は名前を連ねず、「◯◯一同」や「◯◯有志一同」と書きます。
必要であれば、会社名や部署名も書き添えます。
ご夫婦の場合は、基本的には夫の名前のみをフルネームで書きます。
妻の名前も書き添える場合には、夫の名前の左横に妻の名前のみを書くようにしましょう。
金額
中袋の表側には、金額を記入します。
この際は、壱(1)・参(3)・伍(5)・拾(10)などの旧漢字を用います。
数字の前に「金」をつけ、「円」は「圓」と書きましょう。
10,000円であれば「金壱萬圓」、5,000円であれば「金伍仟圓」となります。
中袋の裏側には、お香典を出す人の住所や名前を書きます。
連名でお香典を出し人数が多いという場合には、別の紙に記入し中袋に同封しておきます。
また不祝儀袋は、薄墨で書くのがマナーです。
薄墨には「涙で墨が薄まった」「突然のことで墨をする時間もなかった」という意味が込められています。
最近では、弔事用に薄墨色の筆ぺンやペンが販売されています。
中袋については、読みやすいように黒のインクのペンを使用してもかまいません。
お札の入れ方
お札の入れ方には、とくに決まりはありません。
2枚以上のお札を入れる際には、向きを揃えておきましょう。
また葬儀では、新札は使用しないことがマナーとされています。
密葬で香典を辞退された場合の弔意の伝え方
密葬では、お香典を辞退されるご遺族が多く見られます。
ではお香典を辞退された場合、どのように弔意を伝えればよいのでしょうか。
供花や供物を渡す
お香典の代わりに、供花やお供物をお送りすることもできます。
供花は、会場の広さや使われている花の色にも気を配って送りましょう。
手配の際は、葬儀会社にご相談なさることをおすすめします。
お供物については、故人の宗教・宗派にふさわしいものを送るように心がけます。
供花・お供物を送る場合も、ご遺族が辞退していらっしゃらないかどうか事前の確認が大切です。
「お返しは不要です」というメッセージを添えておかれるのもよいでしょう。
どうしても香典を渡したい場合
どうしてもお香典をお渡ししたいとお思いになる方は、後日の弔問の際に、あらためてご遺族に尋ねてみてはいかがでしょうか。
無理にお渡しするのはマナーに反しますので、あくまでもご遺族の意向を尊重するお気もちで尋ねましょう。
また「御花代」「御花料」としてお渡しになることも可能です。
いずれの場合もご遺族の負担にならない金額にとどめ、「お返しは不要です」とお伝えになるのもよいでしょう。
遺族や喪主は密葬で香典を辞退すべき?
家族葬や密葬では、お香典を辞退なさるご遺族は多いものです。
しかし、家族葬や密葬ではお香典を辞退しなければならないという決まりはありません。
お香典を辞退するかどうかは、ご遺族の意向で自由に決めることができます。
香典を辞退する場合は明確に伝える
お香典を辞退なさる場合には、参列者が迷ってしまわれることのないよう、あらかじめはっきりとお伝えしておくことが大切です。
「弔意を示したい」という先方のお気もちに感謝し、失礼のないように言葉を選ぶことも必要です。
以下にお香典を辞退する際の例文を挙げますので、ご参考になさってください。
誠に勝手ながら、御香典の儀は固くご辞退申し上げます
御香典・御供花・御供物などのお気遣いは、故人の遺志により辞退させていただきます
お香典以外の供花・お供物・弔電を辞退なさる場合は、上記のようにその旨もはっきりと伝えましょう。
香典辞退の連絡方法
お香典を辞退する旨は葬儀の案内状や訃報連絡などの書面でお伝えすることもできますし、親しい方へは、訃報をお知らせするお電話の際にお話しするのもよいでしょう。
以下に例文を挙げますので、ご参考になさってください。
◯月◯日 父◯◯◯◯(故人の名前)が死去いたしました
故人の希望より葬儀・告別式は近親者のみにてとり行います
誠に勝手ながら 故人の遺志により 御香典 御供花 御供え物の儀は固くご辞退申し上げます
ここに故人が生前に賜りましたご厚誼に深謝し 謹んで ご通知申し上げます
喪主◯◯◯◯
本日、父が亡くなりました。
故人の希望で近親者のみで見送る予定です。
申し訳ありませんが、故人との約束で御香典はご辞退させていただきます。
生前は本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
お香典を辞退することは、葬儀会社にも伝えておかれるとよいでしょう。
電話での問い合わせがあった場合には、遺族の意向を伝えきちんと対応してもらえます。
また葬儀当日の受付に「香典辞退」の看板を設置しておいてもらうことも可能です。
お香典辞退について前もってお伝えしておいても、参列者のなかにはお香典をお持ちになる方がいらっしゃるかもしれません。
そのような方へは、あらためてお香典辞退の旨をお伝えし、お断りになってもかまいません。
しかしお香典は故人へのお気もちですので、あくまでも失礼のないよう「それでも」とおっしゃった場合には、ありがたく受け取っておかれることをおすすめします。
密葬では香典返し不要?
では密葬であれば、お香典返しは不要なのでしょうか。
ここでは、密葬をとり行った際のお香典返しについて考えてみましょう。
香典を受け取ったら香典返しはしましょう
密葬をとり行った際でも、いただいたお香典にはお香典返しをしなければなりません。
お香典返しの金額の考え方は一般の葬儀と同じで、半返し(いただいた金額の半分〜3分の1程度)です。
お香典返しとしてよく選ばれているのは、お茶や洗剤・海苔など日常に使え使うことでなくなるもの(消えもの)です。
これは、悲しみが消えるという意味をもっています。
近年ではカタログギフトも人気です。
葬儀当日の荷物にならず、お好きなものを選んでいただくことができます。
お香典返しと混同されやすいものに「会葬御礼品」があります。
「会葬御礼品」は、葬儀に参列してくださった方全員に感謝のしるしとしてお渡しするもので、お香典返しとは別に用意する必要があります。
また、お香典返しを辞退される方もおられるかもしれません。
その場合は無理にお香典返しをお渡しすることは避け、後日お礼状をお送りするのがよいでしょう。
香典返しをする時期
お香典返しは、四十九日を終えた忌明けのタイミングでお送りするのが一般的です。
ご挨拶状と一緒に郵送なさるか、お近くであれば直接うかがってお渡しします。
最近は「即日返し」も多く、葬儀当日にお香典返しをお渡しするケースも多く見られます。
「即日返し」では、お香典の金額にかかわらず一律のお値段の品ものを用意しておき、お渡しします。
思いがけず高額のお香典をいただいた方へは、後日不足分のお香典返しをお送りするのが一般的です。
香典返しの挨拶文の文例
お香典返しのご挨拶状は、忌明けのお礼を兼ねるのが一般的です。
以下に例文を挙げますので、ご参考になさってください。
拝啓
亡父 ◯◯◯◯儀 葬儀に際しましては ご丁寧なお心遣いを賜りましたこと心より厚くお礼申し上げます
お陰様をもちまして 去る◯月◯日に四十九日忌法要を滞りなく済ませることができました
つきましては 心ばかりではございますが 供養のしるしの品をお送りいたしますので ご受納いただければ幸いです
本来であれば拝眉の上お礼申し上げるべきところですが まずは略儀ながら書中をもちましてお礼のご挨拶とさせていただきます
敬具
令和◯年◯月
喪主の住所と氏名
密葬の香典は遺族の意向を守るのがマナー
密葬でお香典をお渡しになる際には、まずご遺族の意向を確認することが重要です。
お世話になった故人へ、なんらかの弔意を示したいとお考えになる方も多いかもしれません。
しかし密葬というお見送りのかたちを選び、お香典を辞退なさると決めたご遺族のお気持ちを尊重し、穏やかなお見送りをしていただけるよう配慮しましょう。